日本から遠く離れた中東のシリアが世界の注目を集めています。
アメリカとソビエト連邦との冷戦が終わった現在でもシリアではアメリカとソビエト連邦を受け継いだロシアとの間で駆け引きが続いています。
日本の人たちには中東の情勢は何が何だか分からないことだらけだと思います。
ポイントだけ簡単にシリアの現状を説明します。
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シリアでは今、誰がもめてるの?
まず、シリアがどこにあるのか地図を見てみましょう。
地中海の東の端に面している陸の要衝です。周囲はイスラエル以外はアラブの国々に囲まれています。
シリアでは2代にわたってアサドという人の一族が権力を握っています。
今のアサド大統領は前の大統領である初代アサド大統領の息子です。
誰と誰がもめているのかというと、アサド大統領一族を始めとした権力層とこれに不満を持つ大多数の国民側の反政府組織がもめているのです。
何でもめるの?
イスラム教には大きく分けて2つの宗派があります。一つがスンナ派(スンニ派)、もう一つがシーア派と言います。
この二つの宗派は仲が良くありません。時には同じアラブ同士でスンナ派とシーア派で戦争をやります。イラン・イラク戦争もイスラム同士の戦いでした。
シリアの国内には国民の70%のスンナ派と、15%程度のシーア派の一派と言われているアラィー派と少数のキリスト教徒、そのほか宗派が存在しています。
普通に考えると国民の大多数であるスンナ派が権力を握ると考えますが、今の大統領のお父さんがクーデターを起こして実権を握りました。1970年の事です。
この初代アサド大統領の宗派はアラウィー派です。
アラウィー派はシリアの中では少数派でしかもスンナ派とそりが合わないシーア派の一派ということから大多数の国民から反感を買います。
アサド一族は政府の要職を始め、シリア社会の重要な役職をほとんど少数派のアラウィー派で固めてしまいました。
大多数派のスンナ派の国民の不満は長年くすぶり続けていました。
そこに「アラブの春」というアラブ世界の大きな動きが始まりました。
2010年のチュニジアを始めとして、エジプト、そして独裁国家で有名だったカダフィ大佐のリビアまで国民の改革によって政権交代が起きたり、独裁者が処刑されたりと大変革が始まったのです。
国民の不満が渦巻くシリアでもアラブの春から刺激を受け、国民は立ち上がりました。
2011年に国民側は反政府組織を立ち上げてシリア政府軍とたたかい始めたのです。
一時はいつアサド大統領が亡命するかと言われるほど反政府側がシリア政府軍を追い詰めた時期もありました。
どうしてこんなに長引いてるの?
ここでアメリカとロシアが出てきます。正確にはイランとイスラエルも関わってきます。
アメリカはアラブの春については肯定的な方針でしたのでシリアの反政府組織を支援しました。EUも同調してました。
ロシアはシリアとソビエト時代からの友好関係があり、ソビエト崩壊後、中東諸国への影響力がガタ落ちとなったロシアにとっては、シリアは中東の最後の砦と言っても良い国です。
イランは国民の大多数がシーア派で、ロシアと同調してシリア政府に支援の精鋭部隊を送っています。
イスラエルはシリアの隣国で、過去に何度も戦争をしています。
シリアが核兵器を開発しようという動きがみられると躊躇することなくシリアの研究施設を空爆するほど激しい反応をする国です。
アメリカは政界、財界を始めとした各界でイスラエルの影響を強く受ける国です。ユダヤ系アメリカ人に重要な部分を握られているといってもいいでしょう。
そのため、アメリカにとってイスラエルを守ることが第一となりますので、イスラエルに対抗するシリア政府を倒す反政府勢力を応援します。
ロシアは中東の権益を失いたくないのでシリア政府を応援します。
大国同士が政府軍と反政府組織をそれぞれ後押ししているので内乱が長引いているのです。
今後は?
内乱によって政府軍も反政府組織も支配できていない地域にISIS(イスラミックエステート)という過激イスラムテロ集団が勢力を伸ばしてきたので、アメリカとロシアは、まずはISIS叩きを優先しようという事になりました。
そうこうしているうちに、ロシアとの関係が注目されているトランプ大統領の登場によってアメリカは反政府組織への支援を表立ってしなくなりました。
その為、現在、反政府組織はかなり追い詰められています。
ただし、シリア政府が非人道的な攻撃を反政府組織やその支持者(大多数の国民)に対して行うようならば、(例えば化学兵器の使用や大虐殺)アメリカは再び支援開始と直接シリア軍に攻撃をする可能性はあります。
2017年段階でシリアから海外に避難した難民は500万人を超えます。
この膨大な数の人たちが祖国に戻れるのはいつになるのでしょうか。
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